
同窓会に出てヘコみました
人材開発コンサルタントの阿部さんに、みなさんの抱える悩みを相談するコーナー。
さまざまな問題を解決してきた百戦錬磨の阿部さんが、目から鱗の回答をお届けします。
質問:
大学を卒業して8年。同窓会に出てヘコみました。みんな一流企業に勤め、「ベトナムが熱い」とか言ってるんです。僕は 中堅企業でノンベンダラリと…。
阿部さんの回答:
「モチベーション3.0」のバージョンに変えろ
【今週の相談】
相談者:伊東保彦さん
年齢:29歳
仕事:中堅メーカーの総務・人事
中堅メーカーで総務・人事を担当しています。
先日、大学時代の同窓会に出て、落ち込みました。僕はいわゆる一流大学を出ています。卒業して8年。学生時代は一緒にアホばっかりやっていた連中も、すっかり大人になっていました。
結婚して子供が2人いるやつがいたり、マイホームを購入したやつがいたり、管理職になっているやつ、起業したやつ、弁護士になっているやつまでいた。
昔のようなバカ話をしながらも、「今はベトナムが熱くて…」とか、「グロービスのクリティカルシンギング講座が…」とか、「後輩がなかなか育ってくれなくて…」とか、そんな会話も出てきて。
やっぱりみんな「一流企業」と呼ばれる会社に勤めている「勝ち組」の人間なんですよ。財布の隙間からゴールドカードなんか見えたし。彼らと比べて、我が身がホント、情けなくなりました。
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僕はもともとトークがヘタで、そのせいか就職活動もうまくいかなくて、誰も社名を知らないような中小企業に勤めています。今の会社にいても給与に限界があるから、結婚にも二の足を踏んでしまう。彼女は一応いますけど、どうも結婚するイメージがわきません。
今の会社はゆるくて、残業も月20時間程度。土日もきっちりと休めます。「ベトナムが熱い」とか「海外出張がどーだ」とか、まったく無縁の世界。何の刺激もないまま、毎日早く家に帰り、暇だからDVDを見たり、マンガを読んだり。休みの日も酒を飲んでダラーッとしています。そうやって、貴重な20代をノンベンダラリとすごしてしまいました。
会社には、研修もほとんどなければ、尊敬できる上司もいません。仕事は、まあ普通にやっていればなんとかなるでしょう。
やっぱり所詮、それが中小企業なんでしょう。大企業とは全然違います。これまで手を抜いてきたツケが回ってきた感じがします。
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もう同窓会で肩身の狭い思いをしたくありません。いつかまた同窓会があったら、「伊東、すごいな!」って言われたい。今のままじゃ、完全に「負け組」ですから。
できれば転職してキャリアップをはかりたいのですが、入れてもらえる会社なんかない気もします。
僕の今の状況だと、まず何をすべきでしょうか。モチベーションがずーっと上がりません。
【阿部さんの回答】
キャリアは「納得感」で考えよ
同窓会に行くと、いろいろと考えさせられますよね。それに学生時代の友人は、普段あまり会えなくても、顔を合わせればすぐ「あの頃」にタイムスリップして、バカ話に花が咲く。不思議なものです。
ただ、30歳前後になると、「仕事」の話が出るようになりますよね。
僕も先日、同窓会がありました。学生時代、居酒屋で酔っ払ってブリーフ一丁になり、焼き鳥の串をおでこに刺して、意味不明な歌を一人で歌い、踊り狂ってたおバカなT君が、今は大手通信企業に勤務。
ここでも「ベトナム」が出てきましたよ(笑)。
「急に来月から1年くらいベトナムに行くことになってさー。嫁も連れていこうと思うんだけど、家を買っちゃったから誰かに貸さないといけなくてさー」って。「T君、大人になったなあ」としみじみ思いました。
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さて、伊東さんへのアドバイスです。まずキャリアを「勝ち組」「負け組」という観点で判断するのはやめましょう。時代錯誤もいいとこです。完全にマスコミに踊らされた言葉ですよ。
今の時代、キャリアは「納得感」を持って働けているか否か、という観点で考えるべきです。
先日、キャリア相談を受けた、伊藤さんと同世代のAさんがこんなことを言っていました。
去年、社内で「キャリアアップ研修」というものがあった。「10年後の自分のビジョンと目標を書こう」という内容だったが、社内の人事の人が講師だから、本音なんか書けない。とりあえず、ほぼ全員が「支店長を目指す」みたいなことを書いた。喫煙所ではみんな、「そうとしか書けないよなあ。人事が読むんだから」と言っていた(笑)。でも今年に入り、会社が同業の外資系企業に買収されてしまい、あの研修をやった意味がまったくなくなった。ちなみに、「長期的なキャリアのビジョンを描くことが大切です!」と指導していた人事の講師はリストラされてしまった──。
こんなことが当たり前にある世の中なんです。だからこそ、キャリアを考えるうえで、今に「納得感」があるか否か、納得するには今、どう行動して充実させるかが重要なんです。
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最近、話題の本に『モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか』(ダニエル・ピンク 著/大前研一 訳/講談社)があります。これに私は非常に共感しました。
ダニエル・ピンクはこんなことを述べています。
モチベーションには3つの種類がある。
1)「モチベーション1.0」 動物としての生存を目的とする「やる気」
2)「モチベーション2.0」 アメとムチ=他者から与えられる信賞必罰に基づく「やる気」
3)「モチベーション3.0」 人間としての成長や社会貢献の欲求など、自分の内面からわき出る「やる気」
伊東さんは、典型的に「モチベーション2.0」に支配されていますね。
・ 同窓会で、「他の人」と自分を比べて評価する。
・ いつか「他の人」から「すごい!」と言われたい。
・ 「会社」は研修をしてくれない。
・ 尊敬できる「上司」がいない。
・ 転職しようにも「入れてもらえる会社」がなさそう。
相談内容の中に、「主体性」がまったくありません。全部、「他者」に依存することを前提にモチベーションが形成されています。
まずは、「モチベーション3.0」のバージョンに変えてみてはどうでしょうか。そのために、ダニエル・ピンクは3つの要素が必要だと言っています。
1)自律性…言われたこと・与えられたことに依存するのではなく、主体的に動く
2)熟達…専門領域を、何年もかけて修行して作りあげる
3)目的…誰に、どんなふうに役立つかを明確にし、コミットする
これを早速、実行してみましょう!
…と言っても抽象的ですし、すぐにできれば苦労しませんよね。
伊東さんの場合、具体的に2つの行動を起こすことをお勧めします。
1)平日夜と土日の時間の使い方を変える。
幸い、会社がゆるい雰囲気なのですから、余暇の時間を有効に活用しましょう。伊東さんがダラダラすごしている間にも、世の中では様々な勉強会や交流会が開かれています。
趣味やサークルでも構いません。会社や自宅以外に居場所を作ってください。これを「サードプレイス(第3の居場所)」と言います。そういう場に来るビジネスパーソンの中には、「モチベーション3.0」を持っている人がたくさんいますから、大いに刺激を受けるはずです。
その中で、「この人!」という人を見つけて仲良くなりましょう。そして、その人たちは、どのように「自律性」「熟達」「目的」を具現化しているのかをよく観察し、TTP(徹底的にパクる)します。
2)一日一改善
物事は急に大きくは変えられません。一歩一歩の積み重ねです。TTPしたことを一日一つ、できるところから変えてみてください。会社の仕事の中で、改善していくといいですね。
たとえば、「モチベーション3.0」を地でいく私の友人は、「日経MJ」(日経流通新聞)を読むことを習慣化し、それを仕事に役立てるために、毎日昼休みに必ず、「日経MJ」を読み、その中から仕事に役立ちそうな記事を一つだけメモしています。
そのメモを、「今日の日経MJから」というタイトルのコラムにまとめ、「iPhone」のアプリを活用してデータベース化し、社内で共有しています。これは自分から会社に提案したそうです。まさに「自律性」「熟達」「目的」を具現化した行動です。
もし、「それ、やってみようかな。でも、共有までは難しそうだな…」と思ったら、それでいいです。メモを取る行動までで十分です。
できない言いわけは考えず、今日からやってみてください。一歩でも半歩でも自分を変える行動を実行しましょう。
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自分が変わる行動を取れば、自然とキャリアは開けていくと思います。ただし、現段階ではその方向性は「神のみぞ知る」ですが。
私は伊東さんに、現在の転職はすすめません。まずは、自分を変えることからすべきだと思うからです。今まで怠惰な生活を送ってきたと思うのなら、その過去を悔いるのではなく、「これからどうするか」に意識を向けることが大切です。
人のせい、会社のせい、他人との比較という発想を捨てて、自分自身が本当に納得できる1日をすごせるように、行動してみてください。



